◆1901年(年齢22歳)与謝野晶子の代表作『みだれ髪』は与謝野鉄幹とのセンセーショナルな不倫恋愛の歌集だった!画像
そうして与謝野鉄幹(与謝野寛)さんの元へ飛んで行った与謝野晶子さんですが、同年処女歌集である『みだれ髪』を発表します。
また、同年の1901年(明治34年)に、与謝野晶子さんは「与謝野」姓を名乗り始めます。出会いからたった一年でそれですから、どれだけの熱量だったかが伺えます。
1901年(明治34年)8月15日、東京新詩社と伊藤文友館の共版として発表。表紙装丁デザインは藤島武二。
女性の恋愛感情を素直に詠んだ斬新な作風は当時賛否両論を巻き起こした。
1973年(昭和48年)に、孫の与謝野馨(後の第74代内閣官房長官)によって主婦の友社から復刊されている。
『みだれ髪』の歌の殆どは、与謝野晶子さんの与謝野鉄幹さんに対する強い恋慕の感情で詠まれています。しかし、それがふたりの不倫恋愛と略奪婚を成立させた感情でもあったことで、多くの批判を浴びることとなります。
◆与謝野晶子の短歌処女歌集である『みだれ髪』は藤島武二の表紙デザインから官能的で女性の感性の解放を実現した素敵な作品 !
与謝野晶子さんが生み出した『みだれ髪』は受験でも文学史として出てくるテッパンの項目なので名前だけは一般の方でもよく知られています。
でも、なかなかお目にかかることがなかった、その1901年当初の表紙はこちら。
画像:Wikipedia
表紙を担当したのは藤島武二氏です。
アールヌーヴォーなデザインでとても表紙から洒落ています。きっと与謝野晶子さんとしては、女性にこそ手を取ってもらいたかったのだろうという印象を持ちます。
矢の根より吹き出でたる花は
詩を意味せるなり
「この書の体裁は悉く藤島武二の衣装に成れり表紙みだれ髪の輪郭は恋愛のハートを射たるにて矢の根より吹き出でたる花は詩を意味せるなり」の文を第3頁に載せている。
与謝野晶子さんがこの歌集に心を込めて、ひとつひとつの要素を決めたということがよくわかる文章ですね。
◆与謝野晶子の短歌処女歌集である『みだれ髪』は表紙から官能的で素敵な作品 !恋の歌は6章399首!意味・現代訳語紹介
『みだれ髪』は次の6章からなる、ということで、全部でナント399首!(今電卓叩きましたw)
・第2章「蓮の花船」76首
・第3章「白百合」36首
・第4章「はたち妻」87首
・第5章「舞姫」22首
・第6章「春思」80首
ものすごくたくさんの歌が発表されたのですね。
与謝野晶子が詠んだ詠んだ斬新な官能的作風が一世を風靡することになりました。
奔放な空想力と激しい情熱、真に短歌近代化の端緒となり、明治浪漫主義に新段階を画すものとなった、その源泉が本書である。
現代では表紙はこんな風にアレンジされています。
画像:amazon
『みだれ髪』は与謝野晶子さんの代表的な作品のひとつであり、とても情熱的でアツイ気持ちのこもったロマンな歌集です。
けれども一般的には与謝野晶子さんは文学史上、同時に「君死にたまふことなかれ」の人として学校教育では中身もより濃く教えられてしまっています。
つまり、与謝野晶子さん=反戦の詩人のようなイメージになっている方が多いようです。しかし、それは与謝野晶子さんという女性を知るうえでは、非常に大きな誤りであったことが分かります。
学校の文学史で名前と作家だけ覚えてただけでは知ることがない話ですね
ある意味、『みだれ髪』にこそ、与謝野晶子さんの原点があり、それが後に女性の自立や解放への考えに向かわせていったように思えます。
そのような角度で『みだれ髪』を見ていくと、「官能的で情緒的な部分」という一般には事件のように扱われたセンセーショナルな部分も、見え方が随分変わってきます。
それらは与謝野晶子さんの清廉潔白な姿勢を貫こうとする、生き方のひとつの表れであり、訴えたい本質の中のごく一部だったことが分かってきます。
◆与謝野晶子の代表作品『みだれ髪』歌集の短歌原文と与謝野鉄幹との愛の軌跡の現代語訳、有名な短歌意味解説を一部紹介
『みだれ髪』の与謝野晶子の
作品を知らなければ
与謝野晶子は見えてこない。
ということで。
ここからは『みだれ髪』の中に出てくる歌をいくつか紹介していきたいと思います。まず圧倒的な感性で、その時代の常識・道徳観に宣戦布告をした与謝野晶子さんの歌があります。
―与謝野晶子
(現代語訳)理性で止めようのない、貴方を欲している私の体。その体を前に、これからの文学や短歌のありようを真剣に語る貴方。貴方は、私の体を抱きしめなくても、寂しくないのですか
完全に与謝野鉄幹(与謝野寛)さんに向けた歌なのが分かります。
二人の関係が表ざたとなってしまう作品なので相手(与謝野鉄幹さん)もちょっと困ったのではないかと思うのですが(笑)この歌をよむ限り、誘惑しているのは与謝野晶子さんの方であるようです。あっぱれという感じです。
また、まだ関係が具体的な状況になる前に与謝野鉄幹さんが病気となっているという知らせを聞いてよんだ歌がこちら
―与謝野晶子
現代語訳>病床のあなたの首を抱き、熱で乾いてしまっている唇を吸って潤わせてあげましょう
官能的ですw
―与謝野晶子
(現代語訳)胸に手を当て、隠された神秘な場所を開けてみると私のはなびらのように紅潮しています。
現代でもこれらを公にするとなると結構なハードルがあるように思うのですが、だいぶ生々しい恋歌を詠んだ与謝野晶子さんでした。
当然の反応として、世間からは想像通りのとても大きな批判を浴びることになります。
◆与謝野晶子の『みだれ髪』が批判された理由は焦点の異なる2点。官能的表現と与謝野鉄幹との不倫略奪愛というゴシップ。画像
すさまじい批判。
幾つかの歌からでも判るように、あまりにもストレートな恋愛表現は慎ましやかな女性を善しとする当時の道徳観から見て到底受け入れられないものであった。
この時代の女性に課されていた「あるべき姿」、
つまりは「慎ましやかで奥ゆかしい女性を善しとする道徳観」を強要してくる封建的価値観への打破を与謝野晶子さんは試みていたのかもしれませんが、それに対する反発は大変激しいものとなったようです。
『みだれ髪』発表当初に与謝野晶子さんが「女性の勇気になるはず」と明確に考えていたかどうかは不明ですが、表紙のデザインやコンセプトに関する意思を見る限り、与謝野晶子さんには女性たちに対する思い入れがあったと私は考えています。
けれども、この作品を批判する者には、多くの女性も存在していました。
世間の批判はすさまじいもので、今の感覚で言えばR18的な扱いも受けましたが、
本人は「思うところを正直に詠まなければ歌ではない」と思っていたので堂々としていました。
文壇にも、少数派ではありましたが、味方してくれる人もいましたしね。
思うところを
正直に詠まなければ歌ではない。
こうした冷静な反論を見てみると、与謝野晶子さんは発表以前から多くの人に理解されないことはもともと想定内だったと思われます。
源氏物語が好きだったことも理由かもしれません。
『みだれ髪』が当時大変な批判にあってしまった理由には、一般大衆の感性のキャパを超えた与謝野晶子さんの「官能的すぎる」表現も確かにありましたが、別の意味で批判の矛先がズレてしまったことも理由のひとつだったように思います。
◆略奪婚をした与謝野晶子と、妻子を捨て歌集『みだれ髪』を編集した与謝野鉄幹というゴシップ批判があった
元々先妻との間にお子さんまでいた与謝野鉄幹さんを、与謝野晶子さんがその家庭から略奪し、一緒になったということは人々の間で、すでに噂になっていました。
与謝野晶子さんは前述の通り、住んでいた堺の家を飛び出して、与謝野鉄幹さんの元へ行き、周囲の冷淡な目を振り払って歌を作り上げていました。
与謝野鉄幹さんもそんな与謝野晶子さんの想いを受けとめ、歌集『みだれ髪』としてまとめ上げて発表。そう、こちらの歌集を編集したのは与謝野鉄幹さんなのです。
不倫略奪愛を
正当化した歌集
現代よりさらに「家」の意識が強い時代であったこともあり、当然、非難中傷が2人に降りかかっていました。家庭を持つ女性からすれば与謝野晶子さんは「敵」であり「悪女」にも見えたことでしょう。
「文壇照魔鏡」なる匿名のゴシップ記事が出まわり裁判沙汰となる。
与謝野鉄幹と与謝野晶子の
愛の共同作業で作った歌集が『みだれ髪』
与謝野晶子さんと与謝野鉄幹さんのひいきの部屋↓
画像:https://amantes-amentes.com
そういうわけで、「官能的すぎる表現」という意味と「不倫略奪愛」という2点において、『みだれ髪』という作品は世間から大きな批判を浴びることになったのでした。
◆与謝野晶子と与謝野鉄幹夫妻はバナナ事件を起こすだけに、旦那はかなりの「女たらし」で結婚後も不倫だらけだった!?画像
与謝野晶子さんに、その官能的な表現を実現させた張本人とも言うべき、旦那の与謝野鉄幹さんですが、調べていくと、とにかく大変な女たらしで絶倫男だったようなのです…。
元々仏教の道を進んで教師でしたが、赴任先でも次々に女子生徒とデキてしまいます。
◆与謝野晶子の旦那・与謝野鉄幹の結婚前の女好きトラブル・夫婦になった後の女性との浮気問題が凄かった
与謝野晶子さんの旦那・与謝野鉄幹さんの女性問題を調べていくと、かなり重度のトラブルに複数回見舞われています。
ちょっと調べただけでもこの位ゴロゴロと出てきます(;’∀’)
そもそも、与謝野晶子さんとの不倫で与謝野鉄幹はその妻子も捨てています。
与謝野鉄幹
クズ疑惑が浮上。
幸い、与謝野晶子さんは小さい時から『源氏物語』を読んでいたので男性なんて所詮そんなもんだと知っていたので大丈夫だった!?ということでしょうか…。
◆与謝野晶子が与謝野鉄幹の浮気相手の女性へ詠んだ歌?がホラー
与謝野鉄幹さんは色々な女性と公然に関係を持っていたと言われています。作品を作るには「感度の高い状況」に身を置いて「感動」することが必要、それも「仕事」ということかもしれません。
次の歌には、浮気相手の女性に対する与謝野晶子さんの憎しみが籠っているとしか思えません。
―与謝野晶子
(俵 万智さんの口語訳から )
<恋に恋する若者のくちびるに 毒ある蜜を塗ってやりたい>
乙女チックに恋に恋する若い女の子に、人を愛するってそんなに甘いもんじゃないんだよと、経験豊富な姐さんが言ってる感じですかね。
怨念感じちゃうw
愛がうまくいかないときは堪えますね。
ちょっとバット振り切りすぎですw
余談になりますが、俵万智さんが与謝野晶子さんの作品を現代語に合わせて詠みなおしている一冊がとても面白いんです。もともとのを同意義で現代語で詠みなおす作業も面白い試みです。
俵万智さんは高校時代の現国の先生の知人だったため、一度お会いしたことがあります、とても爽やかな女性でした。
ここまで読むと与謝野晶子さんが愛におぼれただけの情欲家のように思えてしまうかもしれないので追記しておくと、
1899年(明治32年)の高等女学校令の発布以降から女性も高等教育を受ける権利が認められたことによって積極的に女性の社会的成長を提示することをしていたようです。
今まではともかく、これからは女子も男子とやりあっていけるだけの教養を身につけなくてはならない
与謝野晶子さんって、
女性のことを結構想っている人です。
女性が教養を身につけることを強く提唱していました。
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